化学実験のマニュアルや工業プロセスの資料などを読んでいると、「wt%」という聞き慣れない単位を目にすることがあります。この単位は単なる数字の割合ではなく、物質の組成を把握するうえで極めて重要な意味を持っています。本記事では、この「wt%」が具体的にどのようなものかを掘り下げて解説し、他の濃度表現との違いや計算例についても詳しく紹介していきます。
● 重量パーセントとは？──重さの比率で表す濃度の指標
「wt%」は英語の “weight percent” の略で、日本語では「重量パーセント濃度」と呼ばれます。この単位は、ある物質が混合物全体の質量のうち、どれだけの割合を占めているのかをパーセンテージで表す方法です。
例：100gの水に5gの塩を溶かした場合
この場合、塩は全体（105g）に対して約4.76%の質量を占めていますが、一般的には混合後の合計を100gとし、塩5g／合計100g＝5wt%と表します。
計算式
\text{wt%} = \left( \frac{\text{成分の質量}}{\text{混合物の総質量}} \right) \times 100
● wt%の特性：なぜ現場で好まれるのか？
wt%の最も大きな利点は、計測の基準が「質量」であるという点です。質量は気温や気圧の影響をほとんど受けないため、実験や製造の現場では非常に安定した指標として使われます。
以下の表は、wt%と一般的な「%（パーセント）」との違いをまとめたものです。
| 比較項目 | wt%（重量パーセント） | 一般的な% |
|---|---|---|
| 基準 | 質量（gなど） | 状況に応じて（人数、価格など） |
| 主な用途 | 化学実験、製造、配合計算 | 割引率、人口割合など |
| 例 | 溶液中の成分割合 | 商品の20%割引 |
● vol%との違いとは？──体積ベースの濃度単位と混同しないために
wt%とよく似た表現に「vol%（体積パーセント濃度）」があります。vol%は、成分の体積が混合物全体の体積に対してどれくらいの割合かを示します。
飲料や燃料の成分表示でよく使われています。
| 単位 | 基準 | 主な使用分野 |
|---|---|---|
| wt% | 質量 | 科学実験、製造、材料開発 |
| vol% | 体積 | 飲料表示、ガソリン成分比 |
具体例：エタノール水溶液
100mLの水に10mLのエタノールを混ぜると、体積ベースでは「10vol%」となります。しかし、エタノールの密度（約0.789g/cm³）を考慮して質量を求めると、同じ溶液のwt%は約7.3%となります。
| 濃度表現 | 基準 | 数値 |
|---|---|---|
| vol% | 体積 | 10% |
| wt% | 質量 | 約7.3% |
● 実践！wt%の計算をやってみよう
以下に、wt%に関する代表的な計算例を紹介します。
【例題1】5gの塩を95gの水に溶かす
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合計質量：5g + 95g = 100g
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wt% = (5 ÷ 100) × 100 = 5wt%
【例題2】10wt%の食塩水100gには何gの塩が入っている？
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成分量 = 100g × 0.10 = 10g
【例題3】20wt%のエタノール水溶液を1L（1000g）作る
| 成分 | 質量（g） | 密度（g/cm³） | 体積（mL） |
|---|---|---|---|
| エタノール | 200 | 0.789 | 約253.5 |
| 水 | 800 | 約1.000 | 約746.5 |
● wt%の利点と注意点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | ・温度や圧力の影響を受けにくく、再現性のある計算ができる ・秤で簡単に測定可能 |
| デメリット | ・体積に関する情報が得られない ・密度が異なる液体の比較には不向き |
● その他の濃度表現も知っておこう
wt%やvol%以外にも、用途に応じて以下のような濃度表現が使用されます。
| 単位 | 定義 | 主な用途 |
|---|---|---|
| mol/L（モル濃度） | 溶液1Lあたりのモル数 | 化学反応、分析化学 |
| mol/kg（質量モル濃度） | 溶媒1kgあたりのモル数 | 理論化学、高精度な実験計算 |
● まとめ：目的に応じた濃度表現の使い分けが重要
重量パーセント濃度（wt%）は、実験や製造の場で信頼性の高い指標として重宝されています。vol%やmol/Lなどの他の単位との違いを理解することで、目的に適した濃度表現を選ぶことができ、より正確な分析や操作が可能になります。科学の現場では、単位の選択が結果を大きく左右することを覚えておきましょう。
